母親学級 一回目

私のかかりつけの病院ではお産をする際、母親学級を受けなくてはならず、それは全4回ある。
本日は初回で、自己紹介と、先生によるお産の時のトラブルの説明、栄養士による栄養管理のお話。


会議室に、来年3月〜5月の出産予定の妊婦が17人。
みんな、やたらと細くて小柄だ。
私は空いている一番前の真ん中の席に座る。
自己紹介は、名前と週数、初産か経産婦か、今の心境や不安に感じていることや悩みなど、をコメントしていく。
みなさん、「初産なので不安でいっぱいです」「つわりがひどくて先週まで入院していました」「便秘がちで…」などというコメントに、黙って頷いて同意したりしている。
私の番がきて、とくに今の心境も不安もなにもないので、私の心を占めている問題「コートが全て入らないのでマタニティコートを買わなくてはいけないと思っているのですが高かったりしてなかなかいいのに巡り会えないのが悩みです」と言うと、どんずべりした。こんなにすべったのは初めてだ、というぐらいのすべりっぷりだった。誰も頷かなく、その無表情の妊婦たちの頭上に「シーン」という言葉が書いてあるよう。動揺して、みんなが「よろしくおねがいします」と言って、聴衆がお辞儀をかえしたりしたりして締めているところを、助産士を振り向いて、「以上です!」と切って着席してしまい、事件は会議室で起きているんじゃない、といった空気にしてしまった。


先生は、大森南朋に似ていた。こんなイケてる面の産婦人科医、ミステリー界にしか存在しないと思っていた。しかし、先生の声は大変小さくて、ただでさえ今の時期眠いのに、もう相当に眠いことになってしまったので、手帳の空いているところに、チアの振付けをメモして乗り切った。学生時代を思い出した。


休憩時間に、配られた飲むヨーグルトを飲みながら、夫にすべった報告をメールしたり、振付けをメモっていたりしていたら、こそこそ程度だった背後の皆さんのおしゃべりが、気づいたらむくむくと立ち上って来て、え、いつの間に、というほど皆さん仲良しになっていた。
「母親学級に行くとお友達ができます」というのを、いろんなところで読んではいたが、本当に皆さん心の敷居が低くて驚いた。私は、私と相手が妊婦だというだけで、初対面の人とあんな風に世間話なんかできない。
私の隣の、美容師さんかしらというかんじのギャルママは、当然私に話しかけたりしてこないのがとても有り難かった。


休憩明け、山岡久乃似の声を持つ栄養士の話は、今日この瞬間から気をつけなくてはいけない、といった内容で、ブルーになる一方だった。
脳貧血で具合が悪くなる中、今までカロリー計算ダイエットだって出来なかったのだから、こんな栄養管理は無理だ、もう動くしかない、動けばよし、とばかり考えていた。
生姜焼きのお肉が2枚までなんて!!!!
朝から、タンパク質も野菜もとらなくてはいけない、というのがキツイなー、と思ったが、お雑煮だったらいいのか、とすぐに解決した。しかし朝が起きれないというのが問題だ、朝が、というより空いた時間は全部寝てしまうのが、だけど。
最近の研究で、カルシウムをそんなにとろうとしなくていいというのがわかったという話が一番新鮮だった。ほうれん草の鉄分は、造血しないということも。


終わって、後ろの席の人たちが、お隣同士で、「来週もよろしく」などとわきあいあいと挨拶をしているのを横切りながら、来週は実習か…お隣の人とどうこうするんだろうな…などと、日も暮れた冬空の下、静かにジャケットの衿をたてた。